【レビュー】映画『めがね』にみる豊かな暮らし

わたしの映画館

わたしは東京下町に家族と暮らしている50代主婦です。
長年、家庭と仕事の両立で忙しく、日々があっという間に過ぎ去っていく、そんな日々でした。
そんな気忙しい暮らしに疲れて癒しを求めて本作品を鑑賞しました。

ただ時間に忙殺されていくばかりの日々では、我が身を振り返る余裕などありません。
いまある豊かさにも気づけないようでは、幸せとは言えず、心と時間ばかりすり減らしていきます。
少し、立ち止まる必要性を感じました。

本作品を鑑賞して真の豊かさとはなにかという永遠の問いに一つの解がわかった気がします。
がむしゃらに突っ走っていたころには気づけなかったであろう、本作品の良さもわかりました。
ストレスを抱えた多忙な方におすすめしたい作品です。

『めがね』とは


タイトル  めがね
監督・脚本 荻上直子
キャスト  小林聡美
      市川実日子
      加瀬亮
      光石研
      もたいまさこ
      他

      2007年9月22日公開

受賞歴   2008年 ベルリン国際映画祭ザルツバーグ賞

あらすじ

人生の中で立ち止まった女性が、南国の海辺の小さな町を訪れる。
泊まった宿の人々は、自分たちのペースを崩さず、彼女を振り回す。
そこに流れる穏やかな時間と奇妙な交流は、彼女の心情に徐々に変化をもたらしていく。

Googleより

『めがね』が豊かな暮らしを表現していると言われるのはなぜ?

全編を通して時間がゆるやかに流れていきます。
携帯電話の電波も届かないような島での滞在で主人公は大事なことに気づきます。

いただきものや捕ってきた食材で作る美味しい食事。
食事はみなで美味しくいただく。
朝はさんさんと降り注ぐ日差しの中、「おはようございます」の挨拶とともに島の子どもたちと行う体操で心身をリフレッシュ。
だいたいの感覚で説明がなされている地図。

時間に追われない自然豊かな暮らし
こんな暮らしこそ豊かといえるのではないでしょうか。

『めがね』のレビュー

本作品は現代人が忘れている大切なものに気づかせてくれる、とても素敵な作品と思いました。
この島には、ある目的で人々が集いますが、基本的に心身を休ませるために訪れているのだと思います。
日常に忙殺されている現代人にとって、「休む」ということは大切です。
休み方が下手な日本人にはこの作品を鑑賞することで、「休み方」がわかるかもしれません。

本レビューのテーマである「豊かな暮らし」の解のひとつにもなりました。
循環していく命。
それをありがたく、美味しく、みなで頂くこと。
でてくるお料理の美味しそうなことといったら!

全編、通してゆったり流れる時間と自然豊かな環境にも癒されます。

本作品で特に評価すべきポイントは三つ。

・さくらさんのあずき氷の秘密
主人公の滞在先に先客としているさくらさんという、ちょっと秘密めいた中年女性が本作品に彩を添えてくれています。
さくらさんが「あずき氷」をお店で作って、訪れるお客さんにふるまうのですが、そのお代の支払方法がユニークです。
改めて、通貨ってなんだろう?と考えさせられました。

・人生に疲れたときの対処法
主人公は最初、島の人々がなんのために集っているのかがわかりません。
島に滞在する目的が次第にわかっていく様が面白いです。

・タイトルにある『めがね』が象徴するもの
なぜか登場人物たちは『めがね』をかけています。
ラストにその『めがね』を主人公がどのように取り扱うかが見どころです。
『めがね』が象徴していたものがわかって、『めがね』の謎が腑に落ちます。
このラストシーンは必見です。

まとめ

常になにかに追われているような気忙しさがある現代社会にとって、このような島での滞在時間は夢のようなひとときです。
せめて、そのエッセンスを日常生活に取り入れてみるだけでも日々が豊かになると思います。

休日の過ごし方を変えてみる、食材の扱い方を変えてみる、朝起きたときの習慣を変えてみるなど。
どんな些細なことでも工夫して取り入れてみるだけで時間はゆったりと流れていきます。

本作を観るとモノの価値観も変わることでしょう。
今の世界では通貨が流通し、モノは通貨と引き換えに手に入れます。
通貨を手に入れるために人は働き、ともすれば通貨のあるなしが人の価値さえも決めます。
はたして、このようなことでわたしたちは幸せと言えるでしょうか?

モノがなければ自分で作ってみる、あるいはなにかと交換して手に入れる。
ちょっとしたお手伝いでもよいと思います。
労働も通貨と同等の価値があります。

豊かな暮らしとは知恵を働かせて、人々と支えあいながら生きていくことなんだと本作を通して、気づきを得ました。

本作の監督、キャスト陣による類似作品も既にあります。
ご存じかもしれませんが、『かもめ食堂』です。
まだ、ご覧になっていなければ、こちらもお勧めいたします。

きっと監督、キャスト陣が伝えたいことがあなたにも届くはず。

ここまで、お読みいただき、ありがとうございました。

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